楡男

一億人の腹痛と辞書と毛虫とオレンジと

ユーザービネガー

3時過ぎに就寝し11時頃に目が覚める。土曜の起床前は、誰も自分の味方ではない、という気分にいつもなる。その瞬間だけなる。みんな出払っている、私を置き去りにして──そう思う。気を取り直して自分のためになることをする。具体的には、食事をしたり、ラジオをぼんやり聞いたりする。

買い物をしに街に出た。合羽橋道具街で乾麺のパスタを入れるキャニスターと瓶を開けるための巨大なペンチみたいな道具を購入した。私は握力が並外れて低いため、瓶詰めの食品を開封するときはいつも格闘していた。でも瓶を開けるときぐらい格闘するのも悪くないか……と一度は思ったものの、それは巨大なペンチが巨大すぎて違和感を感じている──たかが瓶を開けるために大げさすぎないか?──その違和感をすげ替えたニセモノの紙芝居だと気付いて、その大きさと改めて向き合った上で購入を決めた。

帰りの地下鉄がいやに混んでいて、それだけでなく換気のために窓を開けた状態で地下を走る車内はときおりメルツバウとしか表現しようのないノイズが広がり、考えることができなくなった私は騒音に身を委ねた。その場は良かったんだけど電車を降りてからヘトヘトになり、少し進路を変えてJR秋葉原駅総武線ホーム(このあたりで休憩できる私が知っている唯一のスポット)に立ち寄って甘酒を買って飲んだ。大げさでなく、生き返る心地だった。