楡男

一億人の腹痛と辞書と毛虫とオレンジと

ワンチャンカッペリーニ

昨日も深夜まで仕事をしていた。そしてきょうは休日だけど仕事をしていた。もはやどこまで残業時間を積み重ねられるかハイスコアアタックしてみたい気さえする。それにしても休日の仕事はあきらかに平日よりも愉しい。それは他人の邪魔が入らないからだ。電話が来たりメールが来たりして作業が停滞したり、新しい仕事を増やされたり、「2マスもどる」されたりしないからだ。仕事が順調に完成していくさまを見るのは快い。もちろん私の職業ではそれだけでは仕事が成り立たないからこそ、平日に色々な人が私のことを「邪魔して」くるわけである。平日の姿、土日の姿、どちらが〈ほんとう〉だと言うことはできないが、しかしこうも違う姿を見せるのはどういうことかと首をひねりたくもなる。

ここ何週間かは生活がすっかり縮小していて、きょうも毎週末のスーパーへの買い出しをあきらめてコンビニでカロリーメイトだの即席スープだのレトルトのお惣菜だのを買い込んできた。自分で自分のごはんを作ることをはなから断念している。否、『自炊力』にあるように、なにも包丁や火を使ってするだけが自炊ではない。自分のために何が必要か選んで購入することだって〈自炊〉だ──その視点は忘れずにいたい。ただ、自分で調理する時間や気力を確保できる見込みが真っ暗だ。まぁ、これはこれで自分で作るよりも栄養バランスが取れている気がしないでもないので(私の献立はいつもわりと「趣味の料理」ってかんじだ)、悪くはない。自炊ができないこと自体はつらくはない。読書ができないこと自体はつらくはない。しかしそれではストーリーは進まない。とにかく今は踏み外さないように、体力を温存するようにという暮らしをしている。半径500メートル以内で全てが完結するようなこじんまりとした暮らしはどちらかというと好きだ。

仕事を終えた後、少しだけ散歩に出た。頭の中に『海腹川背』のBGMが鳴るのを、呼吸に意識を向けることでそれがすっと引いて、外界の景色や音が入ってくる。ここんとこ、頭や体は一応動くけど、目の前の課題をやっつけるだけの機械みたいな心地がしていた。