楡男

一億人の腹痛と辞書と毛虫とオレンジと

ジュレ探偵

日本人は(英語の)LとRの音が区別できないってよく言うけど、ぜんぜん違う音だよね、という話をした。ずっと思ってたけど長いこと言わずにいたこと。いったん区別してしまえばぜんぜん違うんだけど、区別してみようかと真剣に考えてみたことがない人がたぶん多いので、それがそのままLとRの違いがわからない人の数になっている。何かというと、この話は同意が得られにくいどころか、英語を英語っぽく発音することはどこか気恥ずかしいことでさえある、なんて事情もあって、話題にはしないでいた。「LとRってどこが違うのかわかんないよね」で通じ合ってる中に、「えっ!全然違いますよ」と割って入るのは、かなりいやみったらしい印象を与えるのではないか。でも全然違うんだよ。

これと似た話なのかどうか、エスカレーターを歩いて降りていくときにどたどたと足音を立てるのは御法度だという美意識が僕にはあって、自分が立って乗っているときに横を乱暴に通り抜けていって足場が揺れるのが、無神経だな、って思うのですけど、だからといって降りるときは音を立てるなってのも高すぎる要求な気がする。だので、エスカレーターをどたどた降りていくのが平気な人にこういう話をしても、単なる価値観のすれ違いで実りがないんじゃないかとか考えたんだけど。だからといって話が通じる人同士で通じ合ってるのも、こういうのは「わかる人だけわかれ」って次元の話じゃないような気もするし。ただ倫理ではなくマナーの話だから、「こう感じる人もいる」ってのが多様に広まっていくとだんだんいい感じになるのでしょかね。ついでに似たようなので言っとくと、電車の中でガムを噛んでて匂いが漂ってくるのもけっこう気が散ります。