楡男

一億人の腹痛と辞書と毛虫とオレンジと

ハーバーのよしみ

加湿器を出した。

異性*1に対して感じる魅力だとわたしが思っていたものが、実のところ服装や所作に大部分還元できることにここ何年かで気付いて、いろいろやりやすくなった気がしている。やりやすくなった、と言っていいと思う。なにしろ以前の私はことあるごとに「これは運命の出会いなのではないだろうか」と思っていたので。外を歩いていて、いいなと思った異性にことごとくそう思っていたので。今は、そのスカートの柄いいなーとか、黒縁メガネがいいな、自分に似合うものを選んで身に付けてるって素敵だな、とか思っている。「魅力」が個人にべったりくっついてるんじゃなくて、目利きとか、服にかけてる時間とか、自己把握の正確さとか、そうしたものをひっくるめて見たときに浮かび上がる虹みたいな感じ。

これは全部私の主観の中で起こっていることでしかなく、私が「やりやすくなった」ことが周囲にどういう違いをもたらすのか、もたらさないのか、については何も言えることがないけど。

精神科に行って漢方薬をもらってきた。睡眠時間が最近短めだということを話したら、もっと休みを増やしましょうと言われた。薬局でもなんとなく労られているような感じがした。じつは自覚している以上に疲れていて、他人から見ると意外と一目瞭然だったりするのかな。昼に皮膚科行ったときも、先生の話を聞きながらなんか眠いな……と感じていた。

動き続けていれば自分の疲れを直視せずに済ませることができる。休憩と称してYouTubeで新しい動画を見てしまうのは、気分転換である以上に「動きを止めない」ために無意識に選んでいる行動なのかも。逆に、何も見ず、聞かず、刺激がない状態で横になっていると、眠気が前景化してくる。それに包まれる。そこで初めて、自分は疲れていると認めることができる。

(約950文字/30分)

*1:と書くときひっかかりを感じる。しかし、わたしは(消去法的に)異性愛者を自認しており、なおかつ、それ以外の「愛」の形態について語る言葉を持たないので、この言葉を使う。付け足しになるが、「愛」についてわたしが持っている「語る言葉」は、多くが成人期までにテレビやマンガ、ゲーム等から学習したものであり、その主題について自分の見解などを持っているわけでもない。ただただ最小の意味で「語る言葉」を持っているというにすぎない