楡男

一億人の腹痛と辞書と毛虫とオレンジと

テリトリー止まらない

みっちりと仕事。やり続けていると、次第に平衡感覚(比喩)がなくなって、仕事をやり通すだけが目的である生命、それとしての自覚が芽生えてくる。なにがなんでもやり切るぞ、は、スポーツでなら美徳になる可能性があるが、仕事はスポーツではない。スポーツ的な面はあるかもしれないが。

いつしか、1分1秒も無駄にできないという気持ちになってきて、休憩している時間がもったいないとか、休憩している余裕なんかないとか意味不明なことを考え始める。余裕がないときにこそひとは休憩すべきはずなのに。

しかし、机に向かって単調作業を続けることのなにがつらいのか理解できないが、実際つらくて、その場を離れたくてたまらなくなる。作業を始めれば時間の流れに急ブレーキがかかったみたいに、5分が1時間にも感じられる。結局、退屈に苦しめられているのだろうか。

学生のころしていたアルバイトの一環で、数十セットある郵送物を一つ一つ封筒に封入するみたいなのがあって、意外と好きだった。早く正確に入れるためには美しく手を動かす必要があり、それを工夫するのが楽しかった。競技性もあったし。しかしその作業を6時間とか続けることはなかったしな……。あのときと仕事の本質は変わらないけど、ただ当時に比べて圧倒的に多くの物量を扱っているということなのかもな。

(約540文字/20分)