楡男

一億人の腹痛と辞書と毛虫とオレンジと

松本俊彦『世界一やさしい依存症入門』

松本俊彦『世界一やさしい依存症入門』、東京:河出書房新社、2021年。四六判、232pp.

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良書でした。良書なので「言いたいこと」があまりない。「14歳の世渡り術」シリーズの1冊で、いわゆるヤングアダルト向けだけど、依存症を知るための最初の一冊として大人にとっても有意義な読書になるのではないでしょうか。私はそうだったし、マスコミの不適切報道が今も問題になっていることなどを鑑みると、まず学ぶべきは大人のほうだとも言える。

依存は薬物(例えば覚せい剤)や依存性のある行為(例えばゲーム)のせいというよりも「歪んだ人間関係」が根本要因だ、という見方で本書は一貫している。その説明は、本書が一冊かけてしているところなので、実際に読んでもらうのがいいだろう。「依存」についていつのまにかインストールされていた単純化した見方を、この本は豊富な事例を通じて丁寧に描き直してくれる。

あと、内容と関係ないんだけど、本書は「依存」に「いぞん」と濁音のルビを振っている、というのは小さな発見だった。手元の国語辞典では「いそん」で項目が立てられているから「いそん」って言わなきゃいけないかなと思ってたけど、専門家が「いぞん」って言うならそれでいいか、と変な得心をした。