楡男

一億人の腹痛と辞書と毛虫とオレンジと

てのひらのテムズ川

数日前から部屋の中を小さな羽虫が飛び回っていて、寝そべってYouTube見ているときに邪魔しにくる程度ならまだしも、仕事中も目の前をほとんど常に飛ぶようになって、さすがに仕事に差し支えたので「コバエがホイホイ」を買ってきた。で、机の上に配置した。パッケージの箱を見ると効能の説明みたいなのが書いてあって、黒酢などの香りで誘引して、毒の入ったゼリーの中にもぐり込ませることでコバエを殺すらしい、それが「売り」として誇らしげに説明されていた。自分で導入しといて愚痴めいたことを言うのもなんだけど、すごい、コバエを効率的に殺戮する装置なんだ……と思ってちょっと元気がなくなった。なぜかわからないけど「もぐり込む」という動詞の選択がかなりつらい。

感情移入というか、コバエを擬人化してそのライフストーリーを勝手に想像して共感しているとかではなく、もっとシンプルに生き物を殺すって寂しいなというような気持ちがある。「かわいそう」でもある。動いてるものにだったらなんでもそう思うのかもしれない。ロボットでも。自転車を酷使しているのを見たら自転車がかわいそうだと思うしな。

なんか、自分がこの道具をわざわざ購入して便利に使っている点を差し置いて、ある種の繊細さのアピールのためにこのアイテムを引き合いに出したように結果的に見えてしまっていそうで、そうだとしたら実際に私にはそういう側面があるということなんだろうけど、しかしこの商品の開発者がこの日記を見たら(見る可能性は低いかもしれないが)どう思うかなあということは考えてしまう。便利に使っています。

ところで、「ホイホイ」の中を覗くと何匹かが毒にかかって死んでいるのを認めることができるけど、部屋の中にはコバエがまだまだ目につく。一体どれだけいるんだろう、そして、なんでこんなに発生しちゃったんだろう……。