楡男

一億人の腹痛と辞書と毛虫とオレンジと

気まぐれ遠心力

週末に大阪に出かけてきた。そのことを書こうと思う。ところで自宅のパソコンの前に座ったら呼吸が重くなり、にわかに目も乾燥してきた。条件反射か? それとも、部屋の中の湿度やなにかの分布が偏っているのだろうか。前者の方がありそうではある。リモート勤務は仕事の空間と生活の空間が相互浸透し、両者の境界がなくなる、そこでさまざまな弊害が──という心配は私には無縁のものと思っていたが、こう仕事が本格的に疎ましいものと思われるようになると当然ながら感じ方も変わってくるのだろう。

大阪には文学フリマを目的に行った。川柳関係の出店があったから。川柳についてはとにかく入手できる文献を手当たり次第に入手しておこうという体勢になっており(と言いつつ、今のところ食指が伸びないとかであとまわしにしているものもあるが)、私をもっともよく行動に駆り立てるのは「買わなきゃ」という使命感だと思う。誇らしくはない。アニメキャラとかで特定のものを与えると様子がおかしくなる弱点のようなものである。

前乗りして、土曜開店の「葉ね文庫」に足を運んだ。予想外に独特の雰囲気があった。サークル室のような溜まり場のような。先日、詩歌を扱う東京の書店何軒かに立て続けに足を運ぶことがあったが、そのどこにもない空気感だった。それからTwitterの川柳界隈で名前が出ていた梅田の蔦屋書店へ。運営元のCCCにはよい印象がなかったので期待していなかったのだが、入手困難と思われていた本が何冊も陳列されていて度肝を抜かれた。川柳に関しては今まで見たことのある書店の中では一番の充実度だった。ちなみに、どうしても比較してしまうんだけど、ここと立地も近い関西大学のカフェもツタヤになっているんだけど、こちらは品揃えも上澄みみたいなビジネス書が主で(学生向けのラインナップじゃないよな……?)、いわゆるツタヤ図書館にありがちな「見せ本」(本の無駄遣い)もしっかりあって、見るところなしという感じだった。あくまでカフェという位置付けなんだと思うけど。

時間があったら大阪市立図書館で句集を見るという予定候補もあったんだけど、これは実現しなかった。まあ行こうと思えば国会図書館でも読めるから……。

文学フリマは川柳だけが目当てで、でもせっかくだから一回り見てみようかなと思ったんだけど、予想以上に人ごみで、目当てのものを購入したらすぐに退散してしまった。今回訪れた場所の中で一番「密」だった……。文学フリマの混雑度とか調べればわかるんだろうけど、「混雑するかも」という発想に事前に至らないのだった。

販売者の方には一言二言ぐらい話すべきこともあったんだけど、引っ込み思案すぎて何も話せなかった。ブースめがけてやってきて黙々と本を買っていくちょっと謎の人になっていた。

そういうわけで「ちょっと大がかりなお使い」のつもりで着手したこの土日の動きなんだけど、それでは旅行の側面がまったくないのかというとそんなわけもなかった。ので、そのことも記録しておく。

新幹線で移動するのは今後極力控えようと思った。走行中のごうごうという音は私を消耗させる。座席もなんだかんだ狭くて、2時間以上縮こまっていないといけないし。あれは命を削ってスピードを手にいれる悪魔の契約だ。少し大げさに言っているが内容は本心からである。(でも、ならば飛行機がいいのかというと「命を削る」ことには変わりないし、だから電車がいいのだが、そうするともう土日で行って帰ってくるということがほとんど不可能になる。)

最近の日記でいろいろネガティブなことを言い募っているように、体調も万全ではなかったので、高速移動の負担はよりこたえた。さらに、移動先の大阪梅田周辺もかなり人通りは多かったから、楽しんでいる余裕はほとんどなかった。人ごみ苦手。私にとっては旅行目的で来るところじゃないです。

「旅先」で食べたもの。新幹線の中で肉巻きおにぎりとカツサンド。気を抜くと肉ばかり選んでしまう。夜に大阪駅構内「ピッコロ」のビーフカレー。翌日朝に肉うどん。昼に京都駅まで移動して、カレーうどん・鶏天入り。全部肉ものじゃないか。

まとめとかは別にないですが。高速長距離移動と人ごみはきついのでなるべく遭遇しないですむように人生をつくりあげていきたいですね。あと肉食べすぎね。ちなみに11月の文学フリマ東京にもいろいろ気になる話が持ち上がっており、そのとき私は東京にいない予定なので、そこでどうするかもいずれ考えないといけないが。時期が来たらこの文章を読み直してリーズナブルな判断をしたいですね。