楡男

一億人の腹痛と辞書と毛虫とオレンジと

飛び込み信託

湿度かなにかの関係で、ギターの弦の感触が違う。それをおもしろいと思う。その変化を好ましく思う。変化するものに関心を抱き、肯定的にあたるのは、最近の自分の思想的流行なんだな、と気づく。あえて流行だなんて言ってみる。思想はこれからも変わるから。ようするに、どんなものを読んで影響を受けたか。なんだ影響受けてるじゃん。

前は変化しないものが欲しかった。時代が進んでも使える一般的な知識を求めた。偏執的なところがあったと思う。ギターの弦の感触が湿度によって変わるとなれば、そもそもギターを習慣的にさわることまで断念しただろう。(当時はまた、習慣を自由に付け外し可能なものと思い描いてもいた)

シャープペンの芯は、細いほどせまい場所にも書き込める。しかし細すぎれば紙に傷がついてしまう。そういう、一長をとれば一短がついてくるようなありさまが、ほんとうらしいと思う。完璧なものなどないんだよというシニシズムがそのかたすみにはある。経験を重ねて、ものごとの実相らしきところが見えるようになったのを、自慢したいのだろうか。あるいは、完璧なものがないということは、最強なものがないということだ。すべての太さのシャー芯が、目的に応じて選ばれる可能性があるということ。ひとつの救いではある。

まあなんかね。最近はものごとが変化することに興味をひかれるのよって話でした。変わらないものは何かってことよりも。